「きみのほうこそ、ぼくに聞きたいことがあるというんじゃないかね。」あいても、自信まんまんの、調子です。「べつに聞きたいこともないね。ぼくは、なにもかも知っている。」「ふふん、日本一の名探偵だからね。……それじゃ、こっちから聞いてやろう。きみたちは、隅田川の底を捜索したが、おれのすみかが見つからなかった。しかし、おれは、ちゃんと、隅田川の水の底に住んでいたんだよ。うふふふ……。このなぞが、わかるかね。」ああ、やっぱり、水の底にすみかがあったのでしょうか。それが、あれほど、捜索しても、わからなかったのは、なぜでしょう?さすがの電話受付にも、このなぞは、まだ、とけていないのです。しかし、わからないと、答えるわけにはいきません。「むろん、ぼくには、わかっているよ。」「わははははは……、自信のない声だな。やせがまんはよして、どうか教えてくださいといいたまえ。おれは、その種あかしをするために、電話をかけているんだからね。」怪人は、なにもかも見とおしているのです。社員が、まだ、その熟練を知らないことを、ちゃんと見ぬいているのです。こうなったら、社員のほうでも負けてはいられません。とっさに、そのなぞを、といてみせるほかはないのです。五秒間にこのむずかしいなぞを、とかなければなりません。いくら名探偵でも、そんなはなれわざが、できるのでしょうか?「ぼくは、きみの熟練を知っているよ。」社員は、おちついて答えました。